マドリッドからモロッコのマラケシュに飛んだ。
当初はスペインを陸路で南下し、フェリーでジブラルタル海峡を越えアフリカ大陸に渡るルートを考えていたが、マドリッドーマラケシュ間の航空券が予想以上に安かったことに加え、この旅で船に乗ったときは高確率で船酔いに苦しんでいたので、今回は飛行機で行くことにした。
夜8時。
まもなく着陸というとき窓の下に広がる街の灯りを見て、飛行機がアフリカ大陸上空にいることを改めて認識した。
アフリカ。
どこか遠くの、ずっとずっと遠くの世界としか思っていなかった場所にこうして来る日がくるなんて。
ルート作りの時から自分がアフリカに来ることはわかっていたはずなのに、いざその時になると「まさか自分が」と信じられない気持ちになる。
アジアやヨーロッパでは決して感じなかった気持ちだ。
感慨に浸っていると、飛行機はマラケシュ·メナラ国際空港に滑り込んだ。
ATMでお金を降ろし空港を出ると、もわっとした生暖かい空気に全身が包み込まれる。
そして、「タクシー、タクシー」と、ひっきりなしに声をかけてくる男たち。
少し歩くだけで汗が滲む。
タクシーに乗り旧市街へ向かう。
片側3斜線ほどの広い道路は、両端の街頭で薄くオレンジ色に照らされている。
何度も斜線変更を繰り返しながらぐんぐんと前の車を追い越していくタクシー。
「モロッコは初めてかい?」
「はい」
ドライバーと会話しつつももっとゆっくり安全運転を、と心の中で訴える。
マラケシュと言えば旧市街の「フナ広場」。
昼間はフルーツジュースの屋台が少しあるだけだが、夕暮れ時になるとその数は100以上になり、種類も魚介類のフライやタジンやスープと実に様々。
屋台の他にもそこらじゅうで楽器を演奏する人、躍りを披露する人、そしてそれに群がる人々の熱気でフナ広場は毎夜お祭り騒ぎ状態だ。
マラケシュに滞在している間は毎日のようにフナ広場に行き何かしら食べていた。
とは言え、初めからあれもこれもとパクパク食べていたわけではない。
むしろとても慎重に、慎重過ぎるくらいに物を選んで食べていた。
ここは、アフリカ。
ヨーロッパで三ヶ月間お腹を壊さなかったのはヨーロッパだから。
東南アジアで地獄のように苦しんだ日々を戒めのように思い出し、今一度気を引き締める。
ヨーロッパで三ヶ月間お腹を壊さなかったのはヨーロッパだから。
東南アジアで地獄のように苦しんだ日々を戒めのように思い出し、今一度気を引き締める。
まず、お腹を壊すかどうかに美味しさはあまり関係がないように思う。
アジアでは美味しいものでことごとくお腹を壊したからだ。
アジアでは美味しいものでことごとくお腹を壊したからだ。
つまり、お腹を壊すのであればより美味しいものを食べて壊した方が、何かがお買い得な気がする。
もちろん壊さないのが一番であるが。
もちろん壊さないのが一番であるが。
で、これまではちょっとでも危なそうなものは「試しに食べてみる」ではなく「食べない」という選択をしていたが、ここモロッコに来て初めて「試しに食べてもらう」ということを新しく始めた。
文字通り試しに食べてもらうのだ。
マラケシュでは日本人宿に泊まっていたので、宿で知り合った人に試しに食べてもらうのだ。
マラケシュでは日本人宿に泊まっていたので、宿で知り合った人に試しに食べてもらうのだ。
そして、3時間後その人に異常がなければ自分も翌日に食べるという3時間ルールを作った。
3時間以内に異常が出るとは限らないし、その人に異常がなかったからと言って自分も大丈夫という保証なんてないのに、一体自分は何を考えていたのだろう。
3時間以内に異常が出るとは限らないし、その人に異常がなかったからと言って自分も大丈夫という保証なんてないのに、一体自分は何を考えていたのだろう。
と、自分の発想が異常だったと今では思う。
こんな出会ったばかりの人を実験台に使うような非人道的な3時間ルールではあるが、これによってサラダだったり(衛生管理大丈夫!?)、お茶だったり(水道水使ってない!?)、フライだったり(変な油使ってない!?)と言った難敵を次々と撃破していった。
人は酷い恐怖体験だったりトラウマがあると疑心暗鬼になって冷静な思考ができなくなるものだな、と冷静に思った。
サラダ。
フナ広場。
さて、前置きはこれくらいにして、実はここマラケシュでおみそれ!夫婦で世界一周の旅のたくろうさん、こずえさんと再会したのだ。
ブダペスト、サラエボに続き3度目の再会。
ご夫婦と一緒にマラケシュに到着した2人(だった気がする)の日本人も合わせて、5人で夜のフナ広場へ。
「◯番と◯番の屋台がオススメですよ」と100以上もある屋台の中から、オススメの屋台を言えるくらいには、フナ広場に詳しくなっていた。
とは言え、この場合のオススメとは美味しいの他に「お腹を壊す心配がない」という意味も含んでいる。
とは言え、この場合のオススメとは美味しいの他に「お腹を壊す心配がない」という意味も含んでいる。
フナ広場の屋台は番号順に並んでいないので、お目当ての屋台を探すにはとにかく歩き回るしかない。
お祭りはただ歩いているだけでも楽しいものだが、フナ広場は歩いているととても疲れる。
客引きが最高にしつこいからだ。
お祭りはただ歩いているだけでも楽しいものだが、フナ広場は歩いているととても疲れる。
客引きが最高にしつこいからだ。
5人いる中でやたらと自分にばかり絡んできて、腕を思いっきり掴まれて屋台へ引きずり込まれた時は客引きではなく誘拐かと思った。
本気で振りほどこうとしたがその腕は離れず、本気で助けを求めたがその声は広場の熱気にかき消された。
とりあえず何人かでフナ広場に行く場合は、最後尾でしんがりを務めた方が無駄な体力を使わなくて済むことがわかった。
フナ広場。