キエフを観光ってほどでもなく、リヴネに移動。

ジョージアからウクライナの首都キエフに飛んできた。

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かなり地面が近づいているのに何度も旋回を繰り返し、一向に滑走路が見えなかった時は、おいおいまさかと思った。
が、どうやら街中にある空港らしく、あわや墜落かと思ったところで滑走路に滑り込んだ。

機内からは大きな拍手。
この拍手が「長時間のフライトお疲れ様」なのか「無事に着陸おめでとう」なのかわからなかったが、拍手とともに湧き上がる歓声を聞くと、なんとなく後者のような気がした。

自分も歓声はあげなかったが、一応拍手はしておいた。

空港を出ると雨降っていて、風がとても冷たい。
適当にタクシーを拾い宿へ向かう。
ドライバーに「とても寒いですね」とジェスチャーしたら、カーナビの気温が表示されているところを指差した。
そこには外気が12℃と表示されていて、そりゃ寒いわけだ。

夏服しか持ってきていないので、もしこの気温が続くようなら服を買わなくてはと思ったが、翌日はすっかり晴れ気温も30℃を超えてとても蒸し暑かった。
どうやら天気に大きく左右されるようだ。

さっそく観光するため市街地へ出ようとしたが、どうもお腹の調子が悪い。
原因はおそらく昨夜食べたさきイカ。
ここのところフランスパンばかり食べていたのでさすがに塩気が欲しかった。
そんな時、偶然スーパーで見つけたので、酒のあてとして買ったのだ、

ところが、このさきイカが必要以上にしょっぱくて、そして生臭い。
食べている時は久しぶりの塩気に興奮してそこまで気にしなかったが、男が不敵な笑みを浮かべながら魚を釣っているパッケージを見て、もしかしたら自分が食べたのは釣り餌だったのでは、と少しだけ思った。

そんなわけで、キエフではいつお腹が痛くなるかわからなかったので、そこまで観光はしていない。
 
同じ宿にたまたま日本人の男性がいたので、お腹を壊していることを話すと彼もお腹が弱い方だと言った。
なんでも、彼はルーマニアを旅している時に街中で急にお腹が痛くなり必死にトイレを探したらしい。
しかし、探せど探せどトイレは見つからず、我慢の限界にきたところでついに一軒のホテルを見つけた。
九死に一生を得た思いで中に入ると、そこはトイレのない自動車整備工場で、彼はそこであえなく力尽きてしまったらしい。
 
彼は昔の思い出話を語るように嬉々として話していたが、明日は我が身かと思うとあまり笑えない。
旅に出てから何度か思ったが、彼の話を聞いて改めて街中でトイレを探すのは意外と難しい、と思った。
 
幸いキエフには地下鉄が3本走っていて、それぞれの路線の交わる3つの駅にはトイレがあることが確認済みだった。
なので、その3駅を拠点にして適当な駅で降りては少しぶらぶらし、お腹が痛くなりそうならその3駅の中の一番近い駅に戻る、という戦法を取っていた。
 
キエフの地下鉄はどこまでの乗っても1回16円くらいなので、お金を気にせずとにかく地下鉄には乗りまくった。
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そんな感じで、観光しているよりも地下鉄に乗っている時間の方が長かったキエフを後に、西に250kmのところにあるリヴネという街に移動した。
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リヴネはキエフよりもずっと小さい街だが、それゆえ静かでとても落ち着ける。
 
リヴネに着いた夕方、スーパーで買い物をしていたら一組の男女に声をかけられた。
 
少し話が逸れるが、ウクライナに来てからというもの、街を歩いているだけでかなりの視線を感じる。
もちろん外国人が珍しいのもあるだろうが、ちらっとではなくじーっと見てくるのでなんとも歩きにくい。
それに、あの冷たく突き刺さるような視線は、有名人よりもどちらかと言えば罪人を見る目だ。
しかし、やたら視線を感じるのに声を掛けてくる人は1人としていなかった。
掛けづらいのか掛けたくないのかは、わからないが。
 
で、この男女だ。
「日本人ですか?」と聞かれたので「そうです」と答えると、自分のカゴに入ってるビールを見て、「近くの公園で一緒に飲もうよ!仲間がいるからさ!」と誘ってきた。
本当は部屋で1人で飲みたかったし蚊が多そうなところは行きたくなかったが、なぜか断れず「いいですよ」と答えてしまった。
 
男性の名前はアレックス。
女性の名前は忘れたのでXにしておく。
 
3人で10分ほど歩き公園に着くと、2人の男性がベンチに腰掛けていた。
この2人の名前も忘れてしまったので、それぞれa、bとする。
この中でアレックスとbは英語が少し話せたので、2人を介して5人で話をした。
 
どうやらアレックスとX付き合っているらしい。
アレックスが自慢げに「彼女は俺のガールフレンドなんだぜ」と言っていたので間違いないだろう。
だが驚いたことに、Xはすでに別の男性と結婚していて子供いるらしい。
 
ということは目の前のこれはなんだ。
見てはいけないし見たくもないものを、無理やり見せられている気がした。
 
その上さらに驚いたことに、アレックスはXの他に2人の女性と付き合っていて、Xの旦那もXの他に3人の女性と付き合っているというのだ。
一瞬、とんでもない大家族だなと思ったが、よく考えたら今のところこの話には一組の夫婦とその子供しか登場していなかった。
 
それからaの話になった。
aはずっと「アンバー、アンバー」言っていたので初めは何のことかわからなかったが、アレックスが横から「石のことだよ」と教えてくれたので、琥珀のことだとわかった。
おそらくaは、琥珀を装飾品に加工する仕事をしているのだろうと推測した。
ただ詳しく聞く前にaは帰ってしまったので、実際のところはわからない。
もしかしたら、ただ琥珀が好きなだけと言う可能性もある。
どちらにせよ、aの口から発せられた言葉は「アンバー」のみ。
 
一方、bはと言うと今は働いておらずマリファナを売ってるらしい。
危ない匂いがしたのですぐに話題を変えた。
何が好きか聞くと日本のアニメが好きと答えた。
中でもワンピースが好きらしく何か画像を見せてくれと頼まれたが、あいにく「ひぐらしのなく頃に」の画像しかなかったのでそれを見せると、おっかなそうな顔をしていた。
 
今度はbが「ジュンは日本に何人友達がいるんだい?」と聞いていた。
何だいきなりそんな突っ込んだ質問をしてくるのか謎ではあったが、「うーん、3人かな」と答えると、おいおい冗談だろと言わんばかりにbは笑った。
こんなつまらない冗談言うわけないだろと思いながら、冗談に決まってるじゃんと言わんばかりに笑って見せた。
 
それからXとbが帰ると言うので、アレックスと2人で近くのレストランに入ることにした。
そこで適当にビールを飲みながら話していたら、どこからともなく女性が現れてアレックスの隣に座った。
どうやらこれが2人目の彼女らしい。
名前は忘れたので、X’とるす。
 
X’は油絵を描く仕事をしているらしく、作品を幾つか見せてもらった。
絵のことは全くわからないが、どの作品にも悲しげな表情を浮かべた親子が描かれていてそれが少し気になった。
そのあと楽しく話していたと思ったら、目の前の2人が喧嘩を始めてしまった。
原因はわからなかったが、おそらく取るに足らない理由だろう。
最初は軽い言い合いだったのが、だんだんとお互い頭に血が上ったのか声を荒げていき、正直うるさい。
自分のことは完全無視で喧嘩をしていたが、やがてX’は何か捨て台詞を吐き帰ってしまった。
 
アレックスと顔を見合わせ、そろそろ帰ろうかと合図して店を出た。
時刻は23時。
あたりは真っ暗。
 
帰り道、路上の隅で4,5人のおじさんが酒を飲んでいた。
自分1人だったら間違い無く反対側を歩くか引き返すところだが、アレックスが「あ、俺の友達だ!」と駆け寄って行くので、嘘でしょ怖いよと思いながら後をついていくと、案の定怖そうなおじさん達。
「日本人だって!?まあ飲めよ」とラベルも何も貼ってないペットボトルを渡された。
おそらく中身はビールだと思うが、これで睡眠薬とか入ってたら終わりだなと思い、とりあえず飲まずにいた。
 
そして、向かいのおじさんのグラスが空になったのを見て、すかさずビールを注いでみた。
おじさんは何も顔色を変えず、嬉しそうにグラスに注がれたビールを飲んだ。
それを見て大丈夫だと思い、自分も飲んだ。
 
そこからかれこれ2時間ほど飲んだり喋ったりして、宿に帰ったのは1時半。
楽しかったが、相当疲れた。
 
翌朝、アレックスからメールで「今日も飲みに行こうよ!」とお誘いがあったが、「ごめんなさい。二日酔いが酷いので今日は行けません」と返して、1人で近くの動物園に行き思いっきり癒された。
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コメント

  1. 深夜特急 より:

    公園での体験、自分が体験している気分で読ませて頂きました。文章だけでなく写真もいいですね。

    • じゅん より:

      深夜特急さん、コメントありがとうございます。
      少しでも雰囲気が伝われば思って書いているので、そう言って頂けるととても嬉しいです。

  2. たんぽぽみゆ より:

    じゅんさん、お疲れさまです(^o^)
    お腹の具合は大丈夫でしょうか?

    素敵なお写真に癒やされながら読みすすめて…アレックスさんと彼女さんのところで、思わず何回かフフッ(*^^*)と笑ってしまいました。

    本当に、じゅんさんの書かれる文章が楽しくて大好きです。

    お身体にお気をつけて…これからも素敵な旅を、楽しまれますように(*^^*)

    • じゅん より:

      みゆさん、お疲れ様です!
      今はとても良い調子ですが、本当に食べ物には気を使います汗

      自分も話を聞いた時は思わず笑っていまいましたが、
      ウクライナではどうもこれが普通らしく驚きでした^_^;

      ありがとうございます!
      また見に来て頂けると嬉しいです〜