トビリシからカズベギへ。絶景のグルジア軍用道路。

ジョージアの首都トビリシから北へ約150km、ロシアとの国境付近の小さな村「カズベギ村」へと向かう。
この区間の道路はグルジア軍用道路と呼ばれていて、車窓からの景色がそれはそれは絶景なのだそう。

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カズベキ村へは、タクシーもしくはマルシュルートカという乗り合いバスで行くことができる。
値段はマルシュルートカが一人10ラリ(約450円)。
タクシーは人数が集まれば一人15ラリ(約670円)。

タクシーの方が少し高いが、そのかわり途中いくつかある撮影ポイントに寄ることがきる。
マルシュルートカはどこにも止まらない。

できればタクシーで行きたいが、自分のような一人旅をしている人間は一緒に乗る仲間を見つけなければ厳しい。

あ、今一人旅と言ったが、以前ちらっと登場した小沼はずいぶん前によんどころのない事情で帰国した。
そういうわけで、今はひとり。

トビリシの新市街には有名な日本人宿があってそこで仲間を見つけられることもあるらしいが、自分は旧市街の隅の方の宿に泊まっていた。

おまけに12人部屋なのに宿泊客が自分を含めて2人しかいなく、もう1人のインド人は日中はほぼベッドで寝ていたので、仲間など到底見つからない。

とりあえず、マルシュルートカの発着するディドゥベ駅へと向かう。

今いる宿からは地下鉄で4駅ほど。
マルシュルートカは10時に出発するという情報を得たので、念のため宿を8時に出た。

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トビリシの地下鉄はかなり地下深くまで降りる。
ゆえにエスカレーターに乗っている時間も結構長い。
が、「え、地下鉄使うの?じゃあエスカレーターに乗ってる間何してようかな」と暇つぶしを考えるほど長くはない。

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駅のホーム。
電光掲示板には電車が来るまでの時間が、秒単位でカウントされている。
初めは便利だと思ったが、電車がすぐそこまで来ているのにまだ表示か残り30秒とかで、あれれ?と思っていたら、30..24..15..3..0 みたいに、いかにも帳尻を合わせるかの如くカウントされたので、なんだかなと思った。

トビリシの地下鉄は扉が開くのが早い。
日本の鉄道は停止した後に少しだけ後ろにガクンと動き、それから一拍おいて扉が開く。
が、ここではガクンの前に開くので、つい日本の感覚で扉に寄りかかっていて何度か肝を冷やした。

ディドゥベ駅に着き、また長い長いエスカレーターを上り駅を出ると、何人かの男が寄ってくる。
「カズベギ!カズベギ!」と、とりあえず行き先を連呼していると「タクシーは15ラリだが、途中で何箇所か停まって写真が撮れるぞ」と、調べた通りのことをタクシーの運転手に言われた。

「何時に出発するの?」

「人が集まり次第だな」

まあ、こうなることはわかっていたが「できればすぐに出発したいんだよね」と顔で訴えると「じゃあマルシュルートカにするか?」と、意外にも相手が引いた。

タクシーは諦めて初めの予定通りマルシュルートカで行こうとした時、遠くから一人の男が何か叫びながらこちらへ走ってきた。

ジェスチャーから察するに、「あっちに残り一人で出発するタクシーがあるから乗れ!」と言っているようだった。
願ってもない好機の訪れに、驚きながらも男に着いていく。

男はかなり焦っているようで、でこぼこ道をバッグを転がしたり持ち上げたりしながら進む自分を完全に無視。
もしや、すでにタクシーに乗って待っている連中が「一体いつになったら出発するんだ」と苛立っているのではないかと不安になった。

「この車だ」と男が指差す先にあったのは、中3列、8人乗りのワゴン車。
男がバッグを積もうとトランクを開けると、中に乗っている女性4人が一斉に自分を見た。

この瞬間「あ、すみません。やっぱりマルシュで行きます」と言おうと思ったが、時すでに遅し。
バッグは車の中へ放り込まれた。

が、幸いなことに助手席に1人、2列目に3人座っていたので自分は一番後ろに1人で座ることができた。
さらに一番後ろの列は荷物置きになっていたので、自分は5人分のバックパックに埋もれながら座れた。
おそらく彼女たちは、自分の存在をはっきりと「荷物」として認識していたに違いない。

ドライバーと5人を乗せたワゴンは、物凄いスピードで走り出した。
片側一車線なのに、前の車をガンガン追い越していく。
感覚的にはゆうに100km/hは出ていたと思う。

一度だけ本当に事故になりかけた。

前に大型トラック。
見通しの悪いカーブ。

対向車が来てるか見えないこの状況で、まさか追い越したりしないだろうと思っていたら、元気よく反対車線に飛び出した。
そして、タイミング良く対向車が来た。
お互いが急ブレーキを踏み事なきを得たが、対向車のドライバーは相当キレていた。

こっちのドライバーは「あー、悪い悪い」とニヤニヤしていた。
もはや狂気の沙汰としか思えないが、もしこの状態で正面衝突したとしても、最後列でバッグに生き埋めになっている自分だけは助かるのでは、とちょっと良くない事を考えた。

一時間ほど走り最初の撮影ポイント「アナヌリ」に着いた。

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アナヌリは湖のほとりに教会が建っている場所。

前に座っていたロシア人の3人はどうやらグループで来ているらしく、3人で教会の方へ歩いて行った。
助手席に座っていた人は一人旅をしているようで、湖の写真を撮っていた。

自分はというととりあえずトイレへ行き、それから車に戻り酔い止めを飲んだ。

別にトイレを我慢していたわけでも、酔ってしまったわけでもない。
全ては念のため。

もし車の中で急にトイレに行きたくなったり、気分が悪くなってしまったら大変だ。
「荷物」が「お荷物」になるのは避けたい。

そのあと湖や教会の写真を撮っていると、先ほどの一人旅の女性が話しかけてきた。
彼女はイスラエルから来ていて、やはり一人旅。
それから少し会話をしたが、彼女が聞いて自分が答えるの繰り返しで、会話というよりは質疑応答に近い。

出発の時間が来て車に戻ろうとした時、ロシア3人組の一人がみんなで写真を撮ろうと言い、ドライバーにカメラを渡すと、湖を背景に撮るべく「こっちこっち」と手招きした。

で、なぜか自分が真ん中に立つように促す。

そして何枚か写真を撮った。
撮ったものを見ていないので、自分がどんだ無愛想な顔をしていたかわからないが、彼女たちはとても嬉しそうにしていたので良かった。

車に戻ると、さっきまでバッグに押しつぶされていた自分に見向きもしなかったのに、急にフレンドリーになり「これ食べる?」とバナナをくれた。
そして「食べ終わったら捨てるから言ってちょうだい」と、とても親切だ。

さらに驚いたことに「あたなの名前は?どこから来たの?」と、このタイミングでお互いの自己紹介が始まった。
まさかさっきまで本当に「荷物」だと認知されていたんじゃないかと不安になった。

とりあえず3人の名前を聞いたわけだが、2人目の名前を聞いた時には1人目を、3人目の名前を聞いた時には2人目の名前をすでに忘れていた。

3人とも顔立ちが似ていたので、ぱっと見では区別がつかない。
唯一、真ん中に座っていた人は少し個性的な服を着ていたので、それで見分けていた。
緑色の生地に、黒で生き物のシルエットが描かれているパーカーだ。

花だったりトンボだったり犬だったり、とにかく色々な生き物のシルエットが描かれていたのだが、その中にどこからどう見ても「カブトガニ」にしか見えないのがあって、もうそこにしか目がいかなくなっていた。

「ロシアにはカブトガニがいるんですか?」と何度か聞こうと思ったが、変な空気になりそうだったので止めておいた。

アナヌリから車でさらに一時間、二箇所目の撮影ポイント「グダウリ」に着いた。

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グダウリには馬がいて、観光客が乗馬を体験できるようになっている。
4人はドライバーとともに乗馬を楽しんでいたので、自分はその反対側で一人黙々と写真を撮っていた。
何事もなく休憩時間が終わり、車に戻る。

そしてそこから車で一時間、目的地カズベギ村に着いた。

以下写真を。

アナヌリ

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グダウリ

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道中

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コメント

  1. 深夜特急 より:

    文章うまいですね。それは、それは よんどころ 1拍おいて 荷物がお荷物 質疑応答 カブトガニ等々 これからも楽しみにしています。気を付けて旅されてください。

    • じゅん より:

      深夜特急さん、初めまして。
      コメントありがとうございます。

      文章を褒められるのはとても嬉しいです。
      そして、どこか恥ずかしいです。

      ありがとうございます。
      更新頻度はまちまちになってしまいますが、
      お運びください。