リペ島からバンコクへ行くには、まずスピードボートで2時間かけパクバラ港へ渡る。
次にミニバスで2時間かけてトランと言う街まで移動する。
最後に鉄道で15時間かけてバンコクへ行く。
朝9時にリペ島を出発し、バンコクに着いたのが翌朝の8時半なので、約24時間の移動となった。
スピードボートでの移動は、2時間のうち1時間50分は寝ていたので、ほとんど覚えていない。
鉄道での移動も15時間のうち10時間は寝ていたし、残りの時間もほぼ何も考えずぼーっとしていたので、ほとんど覚えていない。
唯一覚ええいるのはミニバスでの移動。
それも2時間のうちのたった2分間だけだ。
ミニバスは予定より40分遅れて出発した。
遅れを取り戻すためかドライバーの性格かわからないが、ミニバスはいきなり恐ろしい速さで走りだした。
後部座席にいたのではっきりとはわからないが、おそらくゆうに100km/hは超えていたと思う。
スピードを落として曲がるはずのカーブも、前もって内側に車線変更することで最高速を維持しながら曲がりきっていた。
もしそのまま外側を走っていたら、遠心力に負けて即コースアウトだろう。
道路は舗装されていたが、時々段差を越えると身体は大きく宙に浮いた。
とてもじゃないが眠ることは出来なかった。
走り初めて1時間くらい経った時、突然道端で車が止まった。
辺りは何もなく、見渡す限り平地が続いている。
眠っていた乗客たちは目的地に着いたのだと思い次々に起きたが、周りの風景を見てそれが違うとわかると、再び眠りに着いた。
ドライバーは車を降りて道路脇へと走ってく。
エアコンの効いた車内からでも、外が焼け付くような炎天下なのが伝わってきた。
最初は用を足すのかと思ったが、そうではなかった。
ドライバーの向かう先には小さな屋台があった。
小走りで屋台に駆け寄ると「1つくれ」と人差し指を立てた。
すると椅子に腰掛けていた男は、ぎっしりと氷の詰まった箱からココナッツを1つ取り出した。
そして、包丁で上部を切り取るとそこにストローを差してドライバーに渡した。
ドライバーはそれを勢いよく飲み干すと、空になったココナッツを男に返した。
男は台の下から中華包丁を取り出し、それを天高くから降り下ろしココナッツを真っ二つにし、割れた片方をドライバーに渡した。
ドライバーはかけていたサングラスを取り、まるでスイカを食べるように思いっきりぶりつく。
時々、種を道に吐き捨てながらあっという間に食べてしまった。
そして、男の持っている果肉のたっぷり付いたもう片方のココナッツと交換すると、再び貪るようにかぶりついた。
そうして1つのココナッツを綺麗に食べ終えると、男に20バーツを払い小走りで車に戻ってきた。
時間にして約2分。
この間、屋台での二人のやり取りに釘付けになっていた。
なぜ、こんななんてことない光景に目を奪われたのか、自分でも説明できない。
普段の生活で、人が食事するシーンが好きなわけではない。
たまにテレビで見かける猛獣の捕食シーンに興奮するわけでもない。
しかし、この時なぜか目の前の光景に心が踊ってしまった。
コメント
ワイルドだな~運転といい、ココナッツのむしゃぶりつきかたといい。おまけにサングラスまで外しちゃうのが、なんかいい。でも食べ終えた後に小走りで帰ってくるあたりが可愛い。
まぁ私は実際に見てないので、あくまで想像なんですが。でも、ふとした瞬間に見た光景って結構記憶に残るもんですよね。
おっ。青海さん久しぶりです。
毎日ブログ拝見してます。
間もなく出発っすね。
そうなんですよ。
時にそれが観光地に行った時よりも記憶に残ったりするから不思議です。