河口から鉄道で3時間かけ、建水へ移動する。
国境を越えてすぐのところに河口駅があって、てっきりそこから鉄道に乗るんだと思いチケットを買いに行ったら、ただの物置小屋のようになっていた。
近くのホテルの受付スタッフが、駅の前でウロウロしてる自分を奇異な目で見ている。
どうやら今は使われておらず、代わりにタクシーで20分のところにある河口北駅が使われていた。
河口北駅。
チケットを買うとき、駅の中へ入るとき、ホームへ出るとき、計3回パスポートを確認された。
さらに荷物検査と金属探知機。
ここは空港ですか。
後ろの少年三人組が、果物ナイフを指摘されていた。
「果物ナイフですよ?これくら別に良いじゃないですかー」と明るく切り抜けようとしていたが、しっかり没収されていた。
ドンマイ、少年。
そんな笑顔は通用しないぞ。
電車は時間通りに来た。
重いバックパックを網棚に乗せるのに苦戦していると、通路を挟んで反対側の男性が靴のまま平然と椅子に上がり、ひょいと網棚に荷物を乗せていた。
その手があったか。
だがここは自分のやり方を貫く。
両手をめいいっぱい伸ばして、あともう少しだとやっていると、周りの人たちが何か危険を感じたのか一斉に身を引いた。
ちょっと、長年(と言っても2ヶ月)連れ添った相方を危険物みたいに見ないでください。
落としても爆発とかしないですから。
席は3列のボックスシート。
知らない6人が向かい合うだけだが、なんとなく気まずい。
こんな時、気まずいと思っているのはおそらく自分だけだ。
誰も口を開かないので、重大な問題についての議論が行き詰まっているようだ。
こういう時は寝るに限る。
3時間後、建水に着いた。
紙に「建水」と書き、隣の男性にここですかと聞くと、大きく頷いたので急いで降りた。
駅を出るとタクシーの客引きがどっと群がってきた。
河口北駅もそうだったが、ここ建水も駅は中心部から離れたところにある。
仕方なくタクシーかバスを使うわけだが、重たい荷物もあるしどのバスに乗ればいいか聞くのも面倒だと思いタクシーを選んだ。
30分ほで走って中心部に着いた。
せっかくならこのまま宿まで行ってもらおうと思い、予約する時に写真を撮っておいた地図を見せる。
ドライバーその住所を自分のスマホに入力し、ナビに従って宿まで行ってくれた。
宿に着くとカウンターで男女数人が話をしている。
おそらく年齢は皆、20代後半。
自分の存在に気づくと、その中の一人の女性がチェックインの手続きをしてくれた。
横目で男性の方を見る。
背は高く、髪は短めの金髪。
人を見た目で判断するのは良くないが、正直びびった。
が、そんな不安は一瞬で消し飛ばされる。
自分が日本人で中国語が話せないとわかると、スマホの翻訳機能を使って色々説明してくれた。
本当、人を見た目で判断するのは良くない。
女性の方は片言の日本語が話せたが、それが少しおかしい。
おそらく日本のドラマを見て覚えたと思うのだが、一人称が「オレ」で二人称が「お前」。
かっこよすぎる。
性格もさっぱりしていて、この上なく姉御肌。
この宿には数日いたが、呼ぶときは「姉さん」と呼んでいた。
一通り説明を終え3階の部屋へ案内すると「何かあったら、オレ、連絡」と言って姉さんは出て行った。
一言一言が無駄にかっこいい。
特にやることもなく街でも散策するかと宿を出ようとしたところで、姉さんに呼び止められ「晩飯、みんな一緒に食う。大丈夫か?」と言われ「は、はい。オーケーです」と即答。
夕食。
食卓にお皿が三つ以上並ぶなんで何日ぶりだろう。
そして、久しぶりに食べる白米。
冗談抜きに涙が出るほど美味しい。
ようやく、フォー生活に終わりを告げられそう。
コメント
どうして棚田で有名な元陽に行かなかったんですか?サパ以上の規模なのに。
その時は存在を知らなかったのです。