インドの絶景。チェラプンジの生きた橋

シロンに着いた日は、ちょうど週に一度のバザールの日だったらしく、街のほとんどの店が閉まっていた。

まだ、薄暗くなる前だったのでメインストリートを歩いた。
周辺の町からも大勢の人が来ているようで、10メートルほどの通りは人で溢れかえっている。

人混みのせいでよく見えないが、両端からは野菜や果物を売る人の叫ぶような声が聞こえた。
シロンはインドとは思えないほど涼しいところだが、この人いきれの中に長くいるとさすがに汗をかきそう。

割と大きめのスーパーも閉まっていることを確認してホテルに戻った。
幸い今日のホテルは部屋で食事を頼むことができたので、懐かしさを感じつつタイ料理のパッタイを頼んだ。
そういえばインドに来てからまだ一度もカレーを食べてない。

翌朝、早起きしてホテルを出た。
今日はシロンからチェラプンジというところへ行く。

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このチャラプンジの近くにある橋をどうしても見たかった。
インドに来てまで橋?と思うかもしれないが、とにかくこの橋がすごい。

シロンからチェラプンジへは乗り合いワゴンが走っているらしく、とりあえずその発着所に向かう。
が、その途中でタクシーの運転手に「チェラプンジ!チャラプンジ!」と声をかけられた。

思わず反応してしまったので話を聞いてみる。
スマホに保存しておいた橋の写真を見せ「ここに行きたいんだけど」と言うと「オーケー、俺が連れて行ってやる」とのこと。

なんでも日帰りの場合はタクシーでチェラプンジまで往復4時間、チェラプンジから橋までは往復4時間のトレッキング、合計で8時間かかるという。

「トレッキングの間は何してるの?」と聞くと「ずっと待っているさ」と一言。
4時間のトレッキングの後に、帰りの乗り合いワゴンを探すだけの体力が残っているか微妙だったので、タクシーにお願いすることにした。
結果的にこの判断が功をそうする。

シロンを出発して1時間半くらい走ると、大きな橋に着いた。
この橋を越えるとチェラプンジらしい。

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あまり知られていないが、チャラプンジは地球上でもっとも雨の降る場所だ。

年間降水量の平均はなんと約12,000mm。
東京が約1,400mmだからおよそ8倍。
さらにこの桁違いの雨は、雨季である6月〜9月に集中的に降るというのだから驚き。

ちなみに過去には年間降水量26,460mmというとんでもない記録を叩き出している。
そいういう訳で今の時期はとても雨が降りやすい。

チェラプンジに入ると、辺りはすっかり雲に覆われてしまった。

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なだらかな丘陵を走っていると思うのだが、かなり低い位置までたれ込めた雲で視界はほぼ何も見えない。

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と思ったら急に視界が開けて、青空が見えた。

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そして、また雲の中へ。

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また晴れる。

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遠くの方で雲の塊がゆっくりと移動しているのが見える。
まさに「雲のすみか」だ。

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丘陵地帯から今度は樹木の鬱蒼と生い茂る山道を、曲がりくねりながら走っていく。
少し視界が開けたところで「ここは景色が良いから写真撮りな」と、ドライバーが車を停めてくれた。

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眼下には見渡す限りの平原。

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そこから車で30分ほど走り、目的地のティルナ村に着いた。
山の斜面に沿うように、木造の小屋がポツポツと建っている小さな村だ。

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ここから橋があるノングリアート村までは徒歩でしか行けない。
ドライバーと村の入り口まで行くと、村の青年たちが寄ってきて「ガイドはいるか?」と聞いてきた。

「え?ガイドって必要なんですか?」という顔をしてドライバーを見ると、「ガイドなんて必要ないよ。ひたすら一本道だからね」と笑いながら答えた。

「それじゃ俺はここで待ってるから言っておいで」と言われ、青年のガイドを断り先へと進んだ。

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村の中央に緩やかな階段があって、それをひたすら下っていく。

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村を抜けると階段は徐々に急になった。

ただ階段を降りているだけなのに異常に疲れる。
日頃の運動不足のせいかわからないが、15分も歩くと身体中から汗が噴き出しきて、歩くのを止めると両足がプルプルと震えだした。

空はすっかり晴れていて気温もどんどん上がっている気がする。
何より湿度がかなり高い。
ジャングルの中にでもいるような感じだ。

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永遠と続いているかのような階段。
座って休んでいると、前から屈強な肉体をした男二人が来て「あと2時間くらいだから頑張れ!」と言うのを聞いて完全に心が折れた。

それから、少し歩いては休憩してを繰り返していたが、何となく気分が悪くなってきた。
さらに手足の痺れも感じた。

熱中症か脱水症状かわからないが、とりあえず引き返すなら今だなと思った。
それに、4時間といってもただ階段を降りるだけでしょ、と根拠もなく余裕だと思っていたので水分をあまり持ってきていない。

カバンの中にあるのは1Lペットボトルの半分より少し多く残った水と、なぜがピーナッツ。
昨日の晩酌の時に食べきれなかったので、今朝何となくカバンに入れたのだ。
これで一応水と塩分はあるから大丈夫かと思ったいたが、ピーナッツを食べたらさら気分が悪くなってしまった。

役に立たないピーナッツをバッグにしまうと残されたのは水だけだが、どう考えてもこれだけじゃ足りない。
近くにあった水道で頭から水をかぶり、首や脇を冷やしながら引き返そうかどうか迷っていると、後ろから7,8人くらいのインド人の一行が来た。

見たところ家族や親戚で来ているようだが、この一行もかなり疲れ切っていた。
このうち3人いた女性は特に疲れているようで、倒れこむように石段に座るとペットボトルの水を喉へと流し込んだ。

そして「ちょっと、すみません」と言いながら自分の前を通ると、順番に水道で顔を洗っていた。

10分くらい休憩した頃、父親と思われる男性がカバンから飴を取り出し、母親や子ども達に配り始めた。
きっと塩飴のようなものだろう。

この時、この家族のやり取りをどんな目で見ていたのか覚えてないが、きっと羨望の眼差しで見ていたに違いない。

すると、母親が父親のそばに寄り何かを耳打ちした。
きっと「あなた、そこの野垂れ死にしそうな人にもあげて」とかそんな類のことを言ったのだろう。

父親が自分の方へ歩み寄り、飴を一つ差し出した。
「これは噛んではいけないよ。ずっと舐めていなさい」と。

自分が飴を口に含んだのを見ると、袋からもう一粒取り出し「これは帰りに舐めさない」と言って、ティッシュに包んでくれた。

飴を舐めてしばらく休憩していると、だいぶ体が楽になった。
日本の塩飴よりもずっと塩が効いていて、加えてどことなく辛さもある。
これがインドの塩飴なのか、と冷静に考えられるくらいには思考も回復した。

そして、そろそろ出発するかとインド人家族の皆さんが準備しているのを見ていると、「さあ、君も一緒に頑張ろう」と声をかけてくださったので、ご同行させていただくことにした。

自分は一番後ろで娘さんらしき女性と話しながら歩いていたのだが、人と話しているとあまり疲れない。
気持ちが紛れるからだろうか。

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この女性は日本に来たことがあって、東京タワーに行ったらしい。
その時のことを嬉しそうに話してくれた。
そのあとも色々な話をしてくれたが、自分が一方的に聞いているのが申し訳なくなり「すいません。自分あまり英語話せないんです」と言うと「気しないで。私も日本語が話せないから同じよ」と。

それから一時間ほど歩くと、ついに目の前に念願の橋が。

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「root bridge」
木の根っこを反対側まで誘導して作っている。
まさに生きた橋。

これは橋が一本なのでシングルデッカー。
そしてこの先にはダブルデッカーと呼ばれる二重橋がある。

このダブルデッカーこそインドで一番見たかったもの。
高鳴る気持ちを抑えて進む。

綺麗な青い川。

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今にも崩れ落ちそうな橋。

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上から見ると結構高さがあるのがわかる。

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ティルナ村を出発して約3時間。
ノングリアート村に着いた。

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小屋が数件あるのみ。
水や電気はないらしい。

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人の気配の全くしない村の中を通り、裏を流れる川へ降りるとそこにあった。
ダブルデッカー。

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さっきのシングルデッカーよりもずっと大きい。
あまりの感動でしばらく立ち尽くしてしまった。

最初の方に書いたが、この辺りは恐ろしく雨が降る。
そのため、普通の橋では河川の増水に耐え切れず流されてしまうらしい。
そこで、強靭ん根を持つゴムの木を誘導して作られたのがこの「root bridge」というわけだ。
橋をかけるのには10年以上もかかる。

このダブルデッカーは樹齢が500年以上だとか。

乗ってみる。

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根っこの隙間に石や木の板を詰めて、人が渡れるようにしている。

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橋の後ろには小さな滝のようなものもある。

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ダブルデッカーを存分に満喫した後、インド人家族の皆にお礼とお別れを言い、来た道を戻る。

帰りはひたすら登り。

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さっきちらっと聞いたのだが、なんでもこの階段は3400段あるらしい。
これがもし200段とかなら張り切って数えながら登るが、さすがに4桁だとそんな気は失せる。

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1時間くらい歩いたところで、とっておいた塩飴を舐める。
座って休憩してると、後ろから来た女性に抜かされた。

この女性は段数を数えていたらしく「あなたの座ってるところはちょうど1400段よ」と教えてくれた。
てことは残り2000段か。と、したくもない計算をついしてしまった。

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そこからティルナまでのことは、あまり覚えていながとにかく無心で登っていた。
村に着き、ドライバーを見た時の安堵感と言ったらもう。

「橋はどうだった?」

「とても良かったです、でもとても疲れました」

「よし。じゃあ帰ろうか」

そう言うとドライバーは自分の荷物をタクシーまで運んでくれた。

「君は疲れているから少しでも休みなさい」と。

帰りはタクシーの中でほぼ寝ていたが、時々綺麗な景色があるとドライバーは車を停めて写真を撮らせてくれた。

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こうして無事にシロンへと帰ってきたが、結局10時間くらいかかった。

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