ソフィア〜カザンラク。今日も穏やかな列車移動。

七つの湖を後に、再びソフィアに戻ってきた。

次に向かうのは「カザンラク」という街だ。
スクリーンショット 2016-08-16 13.07.55

12:50発の列車に乗る。
車内は8人ずつのコンパートメント席になっていた。
ソフィアが始発だがすでに結構な席が埋まっており、大きなバッグも持った自分が入れるスペースはなかなか見当たらない。

バッグを転がしながら行ったり来たりしていると、「ここへ座りなさい」と二人の男性が手招きをしてくれた。
名前はニックとベン。
年は二人ともおそらく60代。
クラウンの高い帽子に杖、どこか格式の高さを感じさせる身なりをしている。
英語は話せないようだった。

車掌がチケットを確認に来たので、カザンラク行きのチケットを見せると、車掌は時々自分の方を見ながらニックとベンと3人で何かを言い合っていた。
まさか列車間違えたかと思ったが、車掌が去ってからニックの方を見ると「何も心配いらないよ」と言うように大きく頷いてくれた。

2時間ほど走った頃、列車が停まり乗客が続々と降りだした。
カザンラクまでは4時間と聞いていたので、座って待っていると「ほら、降りるよ」と二人がが合図したので、とりあえず降りた。

たまたま英語が話せる人がいたので聞いてみると、どうやらカザンラクまでの直通の列車はなく、途中バス移動を挟むとのことだった。
で、今降りたのが「コプリフシティツァ」という噛まずにはいられない名前の駅で、ここから「カルロボ」までバス移動。
そして「カルロボ」から再び列車に乗りカザンラクへ向かう。
スクリーンショット 2016-08-16 13.10.18

バスを待っている間、トイレは大丈夫かとか荷物が多いから椅子に座って待っていなさいとか、二人は本当に気にかけてくれた。
40分程バスに乗りカルロボ駅に着くと、カザンラク行きの列車はすでに停まっていた。

ニックとベンにぴたりとくっついていたので、先ほどのように座る場所を探すことはなかった。
この列車も8人ずつのコンパートメント席で、自分たちの席にはすでに女性が一人座っていた。

発車するや否や3人は大きな声で話し始めた。
おそらくこの女性とは初対面のはずだが、なぜそこまで盛り上がれるのだろう。
日本だったら知らない人と向かい合わせになっても、ほぼ何も話さない気がする。
自分だけか。

窓の外を見ているとベンが肩たたくので何かと思ったら一組のトランプを持っていた。
どうやら手品を見せてくれるらしい。

左手に表向きに乗せられたカードの束。
一番上のカードはハートの12。
そこに右手をかざすと一瞬でクラブの5に変わった。

「え、えっっ!?」と思わず声を出してしまった。
テレビでよくみる手品だ。
ただ、あれはカメラワークが上手いだけで、その場にいたら絶対に種を見破れると思っていた。
が、実際これだけの至近距離で見ても全くわからない。

「もう一回やって!!」とお願いすると、ベンは嬉しそうな顔をしてもう一度右手をカードの束にかざす。
今度はクラブの5がハートの3に変わった。

全くわからない。
もうこれは手をかざすとカードは変わるものとして受け入れるしかない、と思った。

次にベンはカードを裏向きにして、そこから一枚選ぶように指示した。
おそらく選んだカードを当てる手品だ。
適当に真ん中あたりからカードを抜き、ニックと女性に見せる。
カードを束に戻そうとした時、さっきの車掌がチケットの確認にきた。

するとニックが「あんたも見ていきなよ」と言うように手招きした。
車掌はどれどれと中に入ってくる。
随分とゆるい。

車掌にもカードを見せ、束に戻す。
ベンは何度もカードを切る。
そして、一番上のカードをめくり「これだろ!」と自分に見せた。
めくられたカードはハートの9。
「ネー!(ブルガリア語でNoの意味)」と言うと、ベンは「そんな馬鹿な」とわざとらしい顔をして、めくったカードを裏向きにして下に置いた。

そして、続けてもう一枚カードめくり「今度こそこれだろ!」と自分に見せる。
カードはダイヤの9。
「ネー!ネー!」と言うと、またわざとらしく「あれ、おかしいな〜」と首を傾げ、またカードを裏向きにして下に置いた。

またカードをめくるのかと思ったら、ベンは「下を見てごらん」と指差した。
そこには裏向きのカードが3枚あった。
これには本当に驚き。
注意して見ていたはずなのに。

ベンは3枚のカードを順に表にしていく。
3枚のうち2枚は先ほどめくったハートの9とダイヤの9。
そして残る一枚は、スペードの10。
まさに自分が選んだカード。
と思いたかったが、実はこの時選んだカードをうっかり忘れてしまっていた。

いや、正確には10を選んだことは覚えているのだが、それかスペードかクラブは忘れてしまったのだ。
覚えているのは黒いマークということだけ。

おそらく普通に考えたら、目の前のスペードの10が自分の選んだカードで、ここで「おー!当たり!」となるはず。
だが、もし自分の選んだカードがクラブの10で、この後とんでもないところからカードが現れる手品だったらどうしよう。
いや、でもここで「ネー!」と言って、もし本当は当たってたら自分は非常に意地悪な観客になってしまう。

と、あれこれ思考した結果、とりあえず「むむっ、こ、このカードは!?」という表情を浮かべてみた。
するとベンは「どうだすごいだろ」と自慢げな顔をしたので、それを確認して「うんうん!当たってるよ!」と驚いた。

ベンは満面の笑みを浮かべながら、頭を撫でてくれた。
そしてそれを見ていた車掌、ニック、女性も微笑んでいた。
とても穏やかな時間だ。

出発から約4時間、カザンラク駅に着いた。
他の3人は終点まで行くらしく、ここでお別れ。
女性は別れ際、「これをあげるわ」とクッキーとバナナとパンをくれた。

列車から降り振り返ると、ニックとベンが窓から手を振ってくれた。
それを見て自分も大きく手を振り返す。

まもなく出発という時、ドア付近で安全確認をしていた車掌が大きく手招きするので、小走りで駆け寄ると「これは俺の番号だ!何かあったら電話しな!」と、くしゃくしゃに丸めた紙をくれた。

何度もお礼を言い急いで列車から離れる。
列車は発車して、やがて二人の姿は見えなっくなった。

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コメント

  1. ターニア より:

    コプリフシティツァ、懐かしい名前、村全体が美術館として、有名なんですが。。。民家がオープンハウスで、オスマントルコ建築を見れます。面白かったです。泊まったスイスのロッジ風で、予想に反してとても質の高いセンスのいいお家ホテルでした。なんと当時、15年前ですが、ツイン$12。白ワインを昼間から飲んでいるオーナでした。列車の駅から30分ほど離れたところで村の良さが見えなかったでしょうね。

    ブログを読んでこんなに噴き出して笑ったのはあまりありません。これからも楽しみにしてます。

    • じゅん より:

      ターニアさん、初めまして。
      コメントありがとうございます。

      コプリフシティツァ、そうだったんですか。。
      自分の調べ不足でもったいないことをしてしまいました。
      今もブルガリアは物価がとても安いですが、当時はさらに安かったのですね。

      ブログ、そう言っていただけるととても嬉しいです。
      これらも頑張って書いていきますので、たまにでも覗きに来てください。