ムウカンチャイからサパへ移動する。
バスは9時に来ることになっていたが、なんと8時に来た。
時間よりも早くバスが来たのは初めてだ。
急いで支度をしてバスに乗り込んだが、こういうときに忘れ物をしていないか心配だ。
ムウカンチャイへ来た時と同様、くねくねした山道が続く。
車窓には綺麗な田園風景が広がる。
酔いを紛らわすには、十分すぎる風景だ。
名前はわからなかったが、途中の街でお昼を取った。
無論、自分は何も食べなかったが。
ここの休憩でちょっとした出来事があった。
このバスには2人の若い女性が乗っていた。
おそらくベトナム人だと思うのだが、自分がムウカンチャイで乗ってから、やたらとこっちをジロジロ見てくるのだ。
最初は気のせいだと思っていたのだが、どうもそうでもないらしい。
何度も二人してこっちを見ては、顔を見合わせてニヤニヤしている。
よほど自分の顔が面白かったのだろう。
まあ、少し気持ち悪いと思ったが、あまり気にしないようにしていた。
で、ここの休憩だ。
自分は最初から食べるつもりはなかったので、トイレだけ済ませてさっさとバスにの戻ろうと思った。
店の裏のトイレに行くと、誰かが入っている。
1つしかないようだったので、その場で待っていた。
するとドアが開き、先ほどの女性の一人が出てきた。
そして自分の顔を見るや否や、顔を指差し思いっきり吹き出して笑ったのだ。
するとそのまま笑顔を崩さず、自分の前を通り過ぎて店へと戻っていった。
とっさの出来事にビックリして言葉が出なかったが、唾が飛んできて汚いなと感じたのは覚えている。
別に顔に自信があるわけではないが、異国の地で吹き出して笑われるような顔だとも思っていなかった。
バスに戻ると案の定、二人してさっきよりも一層気味の悪い笑顔でこっちを見ている。
その視線はバスを降りるまで続いた。
まあ、ほんの些細な出来事だ。
気にしなければ気になることもない。
しかし、気にせずにはいられない。
結局サパに着くまでの間、自分の顔の何が彼女たちのツボにはまったのか、ずっと考え続けてしまった。